インテリジェントオートメーションが、保険業界の変革の強力な基盤となる可能性があることはよく知られています。ただし、保険ビジネスの根本的な変化が何を意味するのかは、すぐに理解できるものではないかもしれません。
今回話を聞いた保険会社の経営者たちは、業務コスト、レガシーシステム、利用可能なデータプール、業務のサイロ化傾向など、複雑に絡み合うさまざまな問題に取り組んでいます。また同時に、柔軟性の高い製品、ハイパーパーソナライゼーション、デジタルファーストな体験を求める顧客の要望の高まりに応える必要性も認識しています。CX(カスタマーエクスペリエンス)は、リテンションと信頼を強化する重要な成功条件であり、戦略上の優先事項です。
現在も続くパンデミックにより、世界や地域の需要が変化し続けています。不正行為の管理や新しいガイドラインと規制に対応しながら、許容損害率を維持することが困難になっています。
Blue Prismが主催した最近のラウンドテーブルでは、シンガポール、香港、シドニーの保険業界の経営者を招き、自動化によって変革を実現し、これらの問題を解決する際の機会や課題について議論しました。このセッションから得られた重要な洞察のいくつかを以下でご紹介します。
企業で自動化プログラムの推進を妨げているものにはどのようなものがありますか。
「一定の変化を受け入れることができる組織の成熟度が、ある程度関係しています。APACについては、多くの場所で人件費が非常に低い水準にとどまっています。そのため、人件費の削減という点については、自動化が必ずしもビジネス上の問題の解決にはなりません。また、人件費は下がっていると経営者が考えている場合、RPAが注目されることはありません。」
自動化の成熟度の違いを克服して、チームがお互いに学び合えるようにするにはどうすればいいでしょうか。
「私たちの組織の構造は非常に複雑で、APAC全体で18の市場に展開し、多数のチームが存在しています。経理や人事などの非常に大きい部門があるため、異なる部署や事業体の間で必要な量の情報やベストプラクティスを共有することは困難です。現在、私たちは、会社内のどこからでもアクセスできる明確なドキュメントセットを作るため、すべての事業体で共有できるベストプラクティスとモデルの開発を進めています。」
チームの自動化の状況は、12か月前と比べてどう変わりましたか。
「これまでは、自動化を有効に活用できる分野、ユースケース、プロセスを見分けることに多くの労力を費やしてきました。私たちは業績評価指標のみを念頭にプロセスを自動化しているわけではなく、顧客エクスペリエンスの向上という真のメリットの実現を目指しています。そのため、自動化プログラムを競争上の優位性や効率という観点で考えることが重要になります。
「自動引受、顧客セグメンテーション、リスクモデリング、保険請求のすべてのプロセスを考えると、自動化の対象範囲と可能性は非常に大きいといえます。まず、デスクトップの無人RPAから始め、すばらしい成果が得られました。現在は、機械学習やプロセスマイニングを活用し、テクノロジーの価値を実現することによって、最先端を目指しています。」
現在、RPAはテレビの録画機能のようなものかもしれませんが、最終的には同じ性能のNetflixのようなソリューションが生まれるのでしょうか。
「金融機関は、インテリジェントオートメーションを活用して、すでにこのことに取り組んでいます。スタッフ、ロボティクス、テクノロジーを組み合わせたハイブリッドワークフォースを開発することによって、ネイティブデジタルプロセスとしてのソリューションが構築されると予想されます。ここで、ROM(ロボティックオペレーティングモデル)が非常に重要な役割を果たします。ROMによって、スタッフ、カルチャー、テクノロジー、ガバナンス、リーダーシップなどのすべての重要な要素を統合し、イノベーションに活用するための方法を示すことができます。
「また、自動化はIT部門の枠を超えて取り組む必要があります。ローカル開発やノーコードソリューションが登場した現在、特定の部署がすべての問題を担当するのではなく、組織の他の分野から、異なる視点を持ったITに詳しいスタッフに参加してもらう機会が生まれています。」
Blue Prism ROMの導入事例
ラウンドテーブルでは、Blue Prismのロボティックオペレーティングモデル(ROM)と保険会社に開かれる機会について話し合いました。クライアントと話して分かったことは、手近な目標を成し遂げて達成感を得た瞬間から、技術やリスクなどの観点から統制や管理といったものが必要になるということです。過度なシチズンデベロッパーの意欲が誤った方向に向かうこともあるからです。
シチズンデベロッパーの意欲はすばらしいものですが、問題を引き起こす可能性もあります。ROMが活躍するのは、まさにこのような状況です。ROMは、自動化導入プロジェクトの最初から使用することが理想的です。時間とともに生じる課題を克服するために使用することができます。
当社のクライアントのシドニーの大手銀行では、200台以上のデジタルワーカーが配備されました。この銀行は組織規模の問題に直面していましたが、ROMの活用により、インテリジェントオートメーションを使用する方法をカスタマイズし、新たなベストプラクティスも生み出すことができました。さらに最近では、自動化チームをIT部門から独立させ、業務部門の枠を超えたユニットに昇格させました。これは、テクノロジーの導入に成功したことを示しているだけでなく、チームに合わせてデジタルワーカーを配備するという組織のビジョンに基づくものです。
バリューチェーンのすべてを自動化する際に重要なコラボレーション
保険業界では、あらゆる部分に、自動化の大きな可能性があると考えられます。効果的なROMに基づく明確な自動化戦略があれば、保険会社は、自動化すべき新しい事業領域を見つけて、競合優位性を発揮できます。
保険会社は顧客とのあらゆる接点でデジタルワーカーを配備できるようになっていますが、重要なのは、スタッフとデジタルワークフォースとが連携できるワークフォースを作り出すことです。これが実現されることで、スタッフは高い仕事ができるようになり、顧客エクスペリエンス(CX)に集中できるようになります。同時に、デジタルワーカーも、AIや機械学習などの他のテクノロジーと連携して管理業務を処理し、必要なすべてのデータや知見を提供できるようになります。
保険会社における真のトランスフォーメーションは、柔軟性のない堅固な構造から脱却し、アジャイルで回復力の高い組織を作るところから始まります。保険会社は分断された複数のシステムやデータをつなげることで、この業界における競合優位性の新たな源泉となる顧客エクスペリエンスや商品開発において、真の意味でのオムニチャネルアプローチを導入することができます。