COVID-19パンデミックは、すでに英国経済に壊滅的な被害を与えています。4月にはGDPが20%以上減少しました。しかし、多くの専門家は、これはまだ序章に過ぎず、最悪の事態は今年の最終四半期に訪れると考えています。
しかし、都市封鎖の規制が徐々に緩和され、経済活動の多くが今後数週間のうちに再始動できる状況になると、企業のリーダーたちはポストコロナの先の世界を見据えて事業活動体制を立て直し、収益の確保と成長の推進に有利なポジションを確保するための計画を練るようになると予想されています。
ただし、未来の計画を練るには、これまでと比較してはるかに難しくなっています。直近の3か月間に訪れるであろう経済的打撃を吸収しなければならず、顧客や収益、従業員を失ったケースも多い中で、企業のリーダーは先行き不透明な事業環境を前進するための戦略を立てなければならないからです。
COVID-19は、それまでの私たちの日常生活を劇的に変えてました。もはや元に戻ることはありません。このことは、世界のほぼすべての企業が、その目標や価値、また市場参入戦略を見直さなければならないことを意味しています。
アクセンチュア社による最近の研究では、今後は「新たな競争の脅威とチャンスを伴う、予測不可能で控え目な景気回復期が到来し、文化的な規範、社会的価値また行動のめまぐるしい変化を特徴とする全く新しい日常(Never Normal)の10年になるだろう」と記載されています。
クラウドとCOVID-19
パンデミック下においては、あらゆる企業の幾つもの部門が、過去にないスピードでの変化と適応、そして全面的な業務のデジタル移行を迅速に遂行することが強いられました。これまでは承認されるまで1年以上もかかっていたデジタルトランスフォーメーションのプロジェクトが、わずか数週間で導入されています。従業員はすみやかにリモート勤務に移行しなければならなかったため、テクノロジープラットフォーム、セキュリティ、マネジメント、生産性に大きな圧力がかかりました。
企業の中には、他社に比べて非常にうまく軌道を修正し、この変化のレベルとスピードを吸収しているケースも存在します。すでに機敏なオペレーションおよびリソース活用モデルに移行しつつあった企業にとっては、変化に対する適応がはるかに容易だったことに対し、固定化されたインフラ、制限があるアーキテクチャ、またレガシーなテクノロジーシステムを配備していた企業にとっては、変化への適応が非常に困難なものとなっています。
パンデミックにおけるテクノロジーは、新たなサービスの迅速な実現、顧客体験の強化、在宅勤務する従業員の福利厚生と生産性の維持といった点で、きわめて重要な役割を占めており、なかでもクラウドコンピューティングのメリットがかつてないほどクローズアップされています。すでにクラウドインフラ上で業務を遂行できる体制を構築し、SaaS(Software as a Service)を活用していた企業は、社内システムの技術的な制約に縛られてしまう企業と比べて、事業活動の軌道修正、デジタルを基準とした業務運営体制の拡大、従業員の在宅勤務の整備などをはるかにスムーズに行うことができました。
クラウドコンピューティングは、多くの企業間で競争力の差別化を生み出しています。たとえば、英国の大手スーパーマーケットSainsbury's社のCIO、Phil Jordan氏は次のように述べています。「クラウドテクノロジーは、COVID-19によってもたらされた制限への対応策の1つとして、ビジネスを物理的システムからオンラインシステムに移行することを可能にする重要な要素となりました」
基準としてのスピードと拡張性
デジタルトランスフォーメーション、運用の機敏性、およびレジリエンス(回復力)は、長年にわたり、企業の重要な戦略的目標として掲げられています。そして今、COVID-19により、これらの要素が緊急かつ重要な業務となっています。
多くの経営者が、オペレーションと従業員にスピード、俊敏性、適応力を浸透させようと努力しており、検討や計画に十分な時間を割く間もないままに、プロセス、プラットフォーム、構造を組み込みました。他に選択肢がなかったからです。
しかし、それらの企業においても、どのような未来を見据えて運営すべきかということを見直すための時間的余裕が生まれつつあります。多くの企業が、圧力下で達成した内容を振り返り、より機敏でダイナミック、かつ回復力の高いビジネスに再構築して推し進めるチャンスを模索しています。
KPMG社による報告書では、次のような記述があります。「新たな現実が出現する中で、企業は、めまぐるしく変化するビジネスニーズを満たすスピードと柔軟性をもって、クラウドネイティブなソリューション、場所を問わないコネクティビティ、ハイブリッドなマルチクラウドアーキテクチャ、そして自動化されセキュリティが確保されたデリバリーチェーンを用いたデジタルバックボーンの構築を継続することが必要です。」
不確かで脆弱な経済状況において確かなことは、急速に変化する条件と要求に適応し続けることができるかどうか、ということかもしれません。ビジネスは加速し続けており、企業が変化、リスク、チャンスに対応する俊敏性はますます重要になっています。
COVID-19のパンデミックの早期収束を誰もが望んでいますが、これが機になって推し進められたスピーディなビジネスへの移行は、一過的なニーズと考えるべきではありません。「全く新しい日常」への移行に伴い、スピードと機敏性はこれからも経営の核心を占めることになるでしょう。
詳細については、弊社の新しいホワイトペーパー「俊敏性がもたらす競争力の向上(英語)」をご覧ください。同資料では、COVID-19への対応と、確かなもの、不変のものがもはや存在しない今後の経済状況における、運営の迅速さと機敏さの重要性について説明しています。