「デジタル ワーカーの未来」シリーズ5回目で最終回の今回は、今回は、未来のデジタル ワーカーに必要な、残り2つのデジタルエンタープライズ技術「学習と問題解決」について解説します。
過去の投稿、1:知識と知見、2:プランニングと優先順位付け、3:視覚認識、4:コラボレーョンもぜひご覧ください。
これら2つのBlue Prismのインテリジェント オートメーション技術を同時に解説するのは、「学習」と「問題解決」が、互いに密接に関連しているからです。デジタル ワーカーがいかに情報を習得し、どのように各環境に適応するのか(学習)、そして、シンプルな決定論的な意思決定(deterministic decisions)と機械学習を利用した確率論的な意思決定の両方において、これら習得した情報をどのように利用できるのか(問題解決)、というかたちで密接に関連しているのです。
学習済み(訓練済み)AIとデジタル ワーカー
現在では、既存のAPIやインテリジェンスサービスを介した、特定目的の訓練済みAIを簡単に利用することができます。たとえば、Blue Prismが実装している事前定義済みのインテグレーション機能にて、Google、IBM Watson、Microsoft Azure、AWSなどのインテリジェンス機能が利用可能となっています。これにより、Blue Prismのプロセス上にドラッグ&ドロップ操作することで特定のアクションを割り当てるような簡単な操作を行うだけで、デジタル ワーカーは「問題解決」を行う能力を手に入れることができます。
これまでに明らかにしてきた6つのBlue Prismのインテリジェント オートメーション技術のうち、いずれか(たとえばブログ記事「知識と知見」で説明した、翻訳や自然言語の理解といった処理など)を必要とする多くのタスクは、上述の方法によって達成可能となります。
APIエコシステムを介して利用する訓練済みAIは、ビルトインされた、クローズドな エコシステムと比較しても機能面で決して劣るアプローチではありません。実際、GoogleのAutoMLの出現により、特定の領域で実証されていることからも、我々は、すぐにこれらたくさんの機能がより多くの分野で、人間のレベルを凌駕する精度を達成するであろう、と見込んでいます。
AIに対してパートナーファーストのアプローチをとる理由
例えばもし、あなたがRPAベンダーを評価することになった場合、様々な意見や視点・観点に直面することでしょう。RPAに組み込まれたAI、クローズドなエコシステム、オープンな エコシステム、もしくは、ある特定の製品の基盤に深く強固に組み込まれたAIなど、様々なものがあるからです。Blue Prismの場合は、「パートナーセントリック(中心)」のアプローチを採用しています。
はっきりさせておきましょう。我々は我々の製品に、AIを構築することに対して多くの投資を行っていますが、それは常に「適切」でなければなりません。自律型のワークロード スケジュール機能、サーフェス オートメーションや様々なBlue Prism RPA機能において、さらなるインテリジェンスを生み出すため、当社の研究チームは、あらゆる可能性を探っています。我々がAIに関する戦略において、パートナーファーストというアプローチを採っている理由は、シンプルです。インテリジェント オートメーションに対する最大の需要とそこで得られるビジネス上の利益は、ビジネス上の文脈や状況を解釈する高度な専用アルゴリズムの分野(これには、非常に高度なスペックを持つGPUシステムや高度な解析ツールを利用して訓練されることが必要です)、またはベンダーが莫大な研究開発費用を投じてコモディティ化が進む分野、のいずれかに存在するからです。当社が、そのような各ベンダーと強固で戦略的に特化したパートナーシップを構築することで、お客様は、既存の投資や関係性を最大限に活用する選択肢や柔軟性を得ることができ、RPAにおけるAI から最大限のROIを達成できます。
多くのRPAベンダーによる過剰なマーケティングにおいて、頻繁に見落とされがちになりますが、RPAプロセスにおけるAIやML(Machine Learning;機械学習)の実装は、実ははるかに複雑です。それはなぜなら、解決したい課題や問題、その為に必要なデータは、それぞれの組織やビジネスによって特有であり、ユニーク性があるためです。
これは、AIや製品に組み込み済みのAIにとっては、不都合な真実であると言えます。学習能力、適応能力を本当に備えたデジタル ワーカーの場合、機械学習ワークフローのライフサイクル全体を通じて機能することが必須です。
- データサイエンス チャレンジとモデル定義 – 自動化プロセスに機械学習を統合する際、最初の課題となるのが、モデルの作成です。そのアプローチ・方法は多種多様ですし、ここでは教師あり学習(Supervised Learning)と教師なし学習(Unsupervised Learning)の専門的な内容やその違いについて言及しませんが、目の前にある問題を解決するのに効果的な(最低限、人間が実施するのと同等レベルに効果的な)モデルを訓練するには、通常、膨大なデータの収集(およびラベリング)と高性能GPUを持つ機器の利用が必要です。この課題を解決するには、大抵の場合、高性能システムを効果的かつコスト効率よく拡張することができる、クラウド環境を利用することが最善といえます。
- モデルの利用 – モデルが訓練され、構築されたら今度は、デジタル ワーカーが、自ら意思決定を行い、プロセス内の業務を進められるように、訓練済みのモデルから予測値や結果値を取得できることが必要です。(因みにこれは、あなたのもしくは人々のリスクに対する考え方に変化をもたらします。つまり、これまでの、シンプルで説明可能で予測可能なBoolean<論理型;二者択一型>の結果から判断する考え方から、Machine Intelligence<機械知能>や信頼係数/信頼水準をベースとした判断を行う考え方への、変化を意味します。これは、決定論的思考、対、確率論的思考です。) 現在では、多くのクラウドベンダーがAPI等を介してこのような訓練済みのモデルを提供している為、様々な手法でこれを実現することができます。
- モデル最適化の継続 – 訓練済みのモデルが、どんなに優れたものであろうと、継続的な改善と最適化が求められます。ワークフロー全体において、いろいろな意味で、これが一番困難な部分だといえます。すべてのデータが絶えず繰り返し、取得され、ラベリング(「教師なし学習」アプローチでない場合に行われる、データの属性や種類の付与処理)され、トレーニングデータ(訓練用データ)とテストデータ(検証用データ)とに分類され、そして、モデル最適化プロセスにフィードバックされます。これにより、新しいモデルにおいて明確な改善があるかどうか、検証できます。通常、こういったプロセスの繰り返しループにおいては、人間系操作の介在が必要となります。
我々は、多額の研究費用の投下や徹底した取り組みを可能とする超大規模企業が、AI分野における飛躍的な進歩を遂げることで先行し、今後、注目を集めると見込んでいます。これが、Blue Prismが、この分野における「クラウドファースト」戦略を掲げる理由であり、Google、Microsoft、IBMとの強固なパートナーシップを構築することに対して多額の投資を行っている理由でもあります。当社では、これらのプラットフォームとのより緊密なインテグレーションをリリースし、訓練済みAIの最も包括的なエコシステムを構築することを推進しています。これに加えてさらに、Blue Prismデジタル ワークフォースを機械学習ライフサイクル全体へ統合していくことを推進しています。
こういった取り組みが合理化されたワークフローを実現し、データセットの構築~任意のプラットフォーム上でのモデルの訓練~業務プロセス内での訓練済みのモデルの利用、が可能となります。
この分野における当社の戦略的パートナーシップは、いま実を結び始めています。Blue Prism v6.3では、Google GCP MLスタックを利用することで、機械学習ワークフローにBlue Prismを統合することができます。
当社は、MicrosoftのAI製品チームと協業する、Microsoftのグローバルパートナー100社のうちの1社に選ばれました。ここでは、パートナーや顧客での採用/導入事例の構築なども重視しながら、MicrosoftのAIや高度なアナリティクス機能とのより緊密なインテグレーションの実現に向けての取り組みが行われています。
まとめ – 汎用AIと特異性について
未来は、どうなるのでしょうか?AI分野の超大手企業のリーダーたちでさえも、真の汎用AI(人間レベルの知能を実現したAI)の出現は、まだまだ先の話 ― 遥か10年先、50年先(聞く相手にもよりますが)ー としています。Blue Prismの新たなテクノロジー部門は、より適応性に優れた、「RPAやデジタル ワーカーの有用性が明らかな領域」での特定のAIに集中しています。例えば、画面スクリーンや文書の情報を順応して解釈することができる、コンピュータ ビジョンの利用などがあります。業界のリーダーであるGoogle、IBMやMicrosoftとのパートナーシップによってもたらされる強味と、さらには各分野に特化した独立系ソフトウェアベンダーとの協力体制により、Blue Prismは、常にこの分野の最先端技術の恩恵を得られる、非常に有利で特異な立場にあると確信しています。
Blue Prismのビジョン、インテリジェントオートメーションについてもご覧ください。